Commons of Japan Book 1: 水と森
使わなくなった森は、守られたのではなく、見えなくなった。
コモンズは「囲い込まれた」から壊れた、と語られてきました。しかし日本で実際に起きたことは、その逆でもありました。薪炭も草肥も要らなくなり、山に入る人がいなくなる。誰も奪っていないのに、資源は管理の外へ滑り落ちていきます。
本書は、いまも使われ続けている日本のコモンズを訪ねます。宍道湖のしじみ漁は操業を1日3時間・90キログラムに自ら縛ります。柳川の掘割は、埋め立て計画を住民が引き返させました。郡上八幡の水舟、野沢温泉の外湯と野沢組、奥出雲のたたらが30年周期で回した森、西粟倉村の百年の森林構想、伊勢神宮の式年遷宮、知床100平方メートル運動。
改訂版では、川をめぐる枠組みの章を書き下ろしました。河川法、水質、下水道、田への配水は、別々の仕組みとして成り立っています。四万十川を例に、「日本最後の清流」という呼び名と、アユが1,000トンから20トンへ落ちた数字が、どこで分かれるのかを追いました。
本書で扱うこと:
- 使い続けることが、なぜ資源を残すのか
- 過少利用によるコモンズの悲劇——ハーディンの逆向きの崩壊
- 明治の官民有区分と入会林野近代化法が、慣習に何をしたか
- 暗黙知はどう受け渡されるか。式年遷宮が20年である理由
- 名前と条例で守られることと、実際に残ることの距離
安易な自然礼賛でも、田舎の理想化でもありません。答えを出す本ではなく、問う本です。
目次
- はじめに
- 第一部 水
- 宍道湖のしじみ
- 柳川
- 郡上八幡
- 野沢温泉
- 日本の河川に関する枠組み
- 第二部 森
- 共有の森
- 西粟倉村
- たたら製鉄と森
- 第三部 転換
- 明治の囲い込み
- 見えないコモンズ
- 式年遷宮
- 知床